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ムバーラク・エジプト大統領辞任

ムバーラク大統領が辞任し、軍最高評議会が大統領の全権を引き継いだ。

一時、ムバーラク大統領派のデモおよび暴力を伴った制圧活動が功を奏するように見えたが、結果として政府への不満を背景とした群衆が勝利した。アラブ世界では動員政治は必ずしも珍しいことではないが、かかる政権側や政党に主導された動員政治を、匿名の大衆が凌駕した事実は、新たな時代を予感させるに十分である。

この歴史的な事態は、中東諸国のみならず、世界的にも影響を及ぼすことになろう。テュニジア並びにエジプトで発生した変化の理由はさまざまに語られているが、中東世界における14歳以下の人口を比較してみてもテュニジアの若年人口比率は最も低い等、必ずしも報道で言われていることは事実ばかりではない。しかしその一方で、GCC諸国を除く諸国の中でエジプト並びにテュニジアのネット・アクセス比率は高い。大規模なデモが伝えられたヨルダンも同様である(ただし、イエメンは低い)。さらに、近くデモが予定されていると言われるイランなどでは、不満を表明するサイト潰しが頻発しており、政権側も国民の不満の提言およびネットへの対処に追われているようだ。

これらネットを中心に発せられた反政府の主役は、ショート・メッセージであった。これらのメッセージは政権および政権のクライアント(たとえばエジプトでは、失業対策として多数雇用されてきた警察)であった。政権および政権のクライアントを標的としたがゆえに、本質的な生活の不満の解消には至らずとも、テュニジアではこの標的が消えたためにデモがある程度鎮静化し、逆にムバーラク大統領のtoo small too lateの対応ではデモは終息せずに大統領退陣が必要となったのであろう。

さて、このショート・メッセージは不満の表明を主たる内容としたが、問題はこれからである。これらのショート・メッセージを取り込み、「ストーリー」に化す作業が必要となる。79年のイラン革命は大衆革命であり、シャー政権に対する不満の表明であったと理解するが、ホメイニ師はこれを「ストーリー」にし、ヴェラヤーテ・ファギーを具現化した。現在のテュニジアの暫定政権も、エジプトの最高評議会も、ショート・メッセージを「ストーリー」に仕立てるだけの力も支持もないものと思われ、現時点では移行期の役割を果たすにとどまり、問題の完結を将来に引き延ばしたにすぎないようである。ムバーラク政権と一体化した米政権は、途中で政権に引導を渡し、軍との協議を通じてムバーラク退陣の陰の力となったが、はたしてタンターウィ評議会議長は「ストーリー」の主役となれる人物であるかは疑問であるし、対イスラエル関係を含め、軍と米国の思惑通りにシナリオが進展するかも疑わしい。

このように考えると、テュニジアもエジプトも、本年内、まだまだ変化がありそうである。

平成23年2月13日記

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