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イラク連邦議会選挙支持率から

イラク連邦議会選挙分析の続きです。報道では、一部の地域について暫定開票速報が発表されたようですね。選挙結果については、またご報告するとして、下記は、日本貿易保険に対し寄稿した原稿が同機構のHPにアップされたので、ご報告します。

http://tikrit.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-6074.html

よろしければ、ご参考まで。

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イラク連邦議会選挙 投票率から考える

報道によれば、イラクの今次選挙の投票率が出、62.4%となったようです。これは前回の連邦議会選挙の76%よりも下がっていますが、その背景には、資格審査の結果を不服としたスンニー派系政党のボイコットを受けて、スンニー派の多い県で投票率が下がったことを反映しているようです。

この限りでいえば、比較すべきは前回(200512月)の連邦議会選挙ではなく、20051月の暫定議会選挙かもしれません。今回の投票率は、2つの県で50%を割り込んだようですが、60.49%を記録した暫定議会選挙の際には、3つの県で50%を割り込みました。暫定議会選挙の際、サラーフッディーン県およびバグダード特別市の投票率は、それぞれ29%および46%でしが、今回の選挙では73%および53%に上がっています。これは、かつてボイコットしたスンニー派住民が、今回は必ずしも全面的にボイコットに協力したわけではないことを示しているようです。

8日、開票に関与しているライス・アル=マーリキー・タムーズ機構局長が述べたところによれば、マーリキー首相率いる法治連合が優勢でバグダードの多くの選挙区、バスラ県、バーベル県、カルバラー県、ワーシト県およびナジャフ県というシーア住民が多い地域で過半数の得票を得ているそうです。また、第二位はシーア派色の強いイラク国民同盟で、三番目にはアラーウィ元首相率いる世俗系のイラキーヤがつけている由です。他の報道によれば、イラキーヤが健闘し、クルド政党を凌駕しているようです。イラキーヤは、ボイコットしたスンニー派政党が得るはずの支持者票を獲得したことに加え、以前よりも世俗主義の主張が多くの人々にアピールしているようです。イラクの2005年暫定国会選挙および同年末の連邦議会選挙を比較すると、バグダードやバスラといった浮動票が多いはずの大都市で世俗政党が後退しており、宗教政党優勢の傾向が続いていたようですが、その傾向に一定の歯止めがかかったのかもしれません。

現時点ではどの政党が勝ったとしても単独過半数は想定しにくいようです。しかし、もしも法治連合が過半数に遠い得票数しか得られずに第一党になると、以前からうわさされていたイラク国民同盟との連立があるのかもしれません。逆に、過半数近くにまで行くと、大党連立もしくは少数政党との連立の可能性が高くなるのかもしれません。いずれにせよ、過去においてはあまり重要ではなかった世俗系政党がキャスティングボードを握る可能性も出てきたのは新たな現象です。

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イラク国会選挙投票日にあたって

イラクにおいて、7日、連邦議会(国会)選挙の投票が行われた。現時点では、投票率を含め選挙の結果は明らかになっていないが、現時点での気づきの点、以下の通り。なお、この分析の転載・引用にあたっては、必ず事前にご連絡を願いたい。

1)治安の悪化
総選挙が近づくにつれイラクの治安は悪化し、2月の治安状況は死者数ベースで1.5~2倍に悪化した。投票日直前のバアクーバにおける連続自爆テロ、投票日当日の中部スンニー派地域やバグダードにおける爆弾テロ、迫撃砲攻撃など、イラク軍が主体となって警備を実施している各地で、治安の悪化が目立っている。バグダード市の状況は、数年前の最悪の時期を想定させる事態になっている。
本来、米軍の撤退を前にして独立と安定を実感し、困難な宗派・民族対立を克服して本格政権を樹立し、復興への道のりを確認するはずであった選挙は、最近、とみに暗雲が立ち込める状況に見えてきた。
選挙に先立ち、イラクのアル=カーイダはスンニー派住民に対して「外出禁止令」として攻撃の警告を出した。バアクーバやサーマッラー等のスンニー派が主体なるもシーア派の混在する地域やナジャフのテロは、かつてイラクのアル=カーイダやスンニー派系抵抗勢力が実施していたような手口で、且つ宗派対立をあおるもののように見える。また、サドル勢力も活動を活発化させているようで、グリーンゾーンへの迫撃砲などは、やはりかつての手口をほうふつさせる。
現時点で、この状況がかつての最悪の時期の状況を復活させるかは不明ではあるが、今少しこの状況が継続するようであれば、7月に予定されている米軍攻撃部隊の撤退にも影響を与え、すなわち、米軍の世界戦略への影響も否定できない状況になるかもしれない。

2)選挙結果が意味するもの
選挙の結果は、少なくとも数日、長ければ1カ月以上経てから発表されることが予測されるが、下馬評では、マーリキー首相が率いる法治連合もしくはイラク・イスラーム最高評議会、ジャアファリー前首相、サドル勢力等が参加するイラク国民同盟のいずれかが第一党を占めるものの、単独過半数の確保は難しいとされている。アラーウィ元首相の率いる世俗色の強いイラク国民運動やクルド勢力、部族系政党との連立が模索されることになる趣である。
イラク独立選挙管理委員会は、旧バアス党との関係を理由として約500名の候補者の出馬資格を取り消したが、この提言を行った委員長がシーア派色の強いイラク国民同盟から出馬しているために、問題は政府に対する不信感にとどまらず、宗派対立を煽るものとなった。イラク国民運動のような世俗系の人気もかつてより高まってはいるものの、宗派対立の再燃も懸念される状況である。
イラクの選挙は米国の撤退を可能にし、情勢の安定化を期待させるものであるはずだったが、現状では、いくつもの要素が事態を複雑にしている。第一に、選挙情勢の流動化により、マーリキー首相はこれまでの路線の変更を余儀なくされた。一時期の独裁的手法は影をひそめたが、マーリキー首相は、ナショナリズムの高揚を煽る勢力に対抗するために、外国の石油分野への投資への批判を容認し、あるいは『人気取り』と批判されながらも、旧バアス党系軍人の復職を突如発表する等、場当たり的かじ取りに終始しており、かりにマーリキー首相続投となっても、その路線の行く末は不透明感が付きまとう。
第二に、イランの影響力が無視できない。米国撤退を前にしてイランは、仇敵イラクへの影響力を強める傾向にある。イランとしては、イラクやアフガニスタン情勢が沈静化すれば、イランを目の敵にする米国がイランに対する敵対姿勢を一層強化させると考えているようで、イラクの混乱は望ましいはずである。その一方で、イランが全面的にイラクを混乱させれば、イラク国内のイラン・シンパの変節を招きかねないため、イラクの混乱は一定のものにとどめる必要がある。さらに、イランにとってイラクが強固な形で復活することは脅威に他ならない。このためイランは、弱くまとまらないイラクの損害が望ましい。そこで一定の協力姿勢を見せながらも、マーリキー首相とサドル勢力が接近した際には圧力を行使させてその仲を裂き、単独過半数を獲得する政権が出ないように工作してきたとされている。このように考えると、米国撤退後のイラクは多々立ちに安定を意味していないようである。

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選挙、選挙、選挙

3日、民主党より、7月の参議院選挙埼玉県選挙区の公認候補者の発表がありました。現在の日本がおかれた状況をしっかりと見つめ、耳触りのいい発言ではなく、国にしかできない外交や安全保障、エネルギーについて正面から訴えていくつもりであります。

さて、かたやイラクでも7日には選挙が予定されています。

このたびの選挙はシーア派を中心としたこれまでの与党、統一イラク同盟が分裂する中で選挙戦に突入することになりました。マーリキー首相率いる法治連合と、ジャアファリー前首相、イラク・イスラーム最高評議会(ISCI)、サドル勢力、チャラビー前副首相等が構成するイラク国民連合のいずれかが第一党になると思われますが、いずれの政党も過半数を確保する勢いにはありません。

今回の選挙の焦点は、以下のとおりと考えています。

1)選挙戦後の連立のあり方

2)スンニー派地域の投票率とその後のスンニー派取り込み

3)選挙の結果次第で変わり得るこれまでの政策の継続・非継続、さらにはこれに対する米国の対応

4)イランの影響力の進展具合とアラブ諸国の新政権への対応

5)再び強まる傾向に見える宗派・民族対立とその収拾方法

イラク情勢は以前ほど派手な殺戮でないためか、最近の日本のマスコミは取り上げていませんが、その推移は、世界のエネルギー情勢=世界経済、米国の世界戦略とオバマへの世論の動向、中東世界のダイナミズムへの致命的な影響、日本のエネルギー政策等に大きな影響を与える可能性があり、引き続き注視が必要です。

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