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彷徨う

今回の旅ももうすぐ終わろうとしている。
中東に来るたびに、いろいろなことを考えさせられる。

今回強く感じたのは、中東の人々は彷徨っているということ。

今回の旅はちょうど、イスラエルのガザ侵攻と重なった。ガザ情勢については中東諸国に詳細に報道されていたが、冷戦後の世界では、もはや統一されたアラブの立場などというものは存在せず、ドーハにおいて開催されたアラブ首脳会議には、多くの国が出席しなかった。サウジアラビアでは抗議活動を抑制する政府の動きが始まり、エジプトは、ガザ地区と接する国でありながら、占領地の封鎖を続け、人道的な見地から批判を招いた。国民の間でも同様で、2005年のレバノンにおけるヒズボッラーが勝利を宣言した際とは大きく異なり、ガザの惨状に大きな同情が寄せられながらも、ハマースに大衆の大きな支持が集まったようには見えなかった。米国は大統領の交代の時期に当たったこともあり、今回の危機の主役の一人には見えず、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国の外交努力の方が目立ったようであった。各国がそれぞれ独自の利益を見出そうにも、頼るべき軸は見えない様である。

経済面では、世界的な景気の後退と物価高が庶民を苦しめている。シリアの物価は7年前よりも倍近く上がったように感じられ、かつてにぎわった有名店でも閑古鳥が鳴いている。厳しい中で宗教に助けを求める兆候は継続しているようだが、一時期よりもその勢いを感じない。

新しい米国大統領への期待も、その人事やガザ危機に対する沈黙を通じ、就任時には疑いの色が強くなっていた。イラクにしても、多国籍軍の撤退は歓迎するとしながらも、その先が見えないまま、来るべき空白を埋めるための政治家たちの争いが目立ち始めている。今週、シリアを後にしてイラクに向かったイラク難民、アブー・アフマド一家が定住するはずのバグダード市アーザミーヤでは、一昨日、イスラーム党事務所を狙ったとみられる自動車爆弾により4名が死亡した。彼らにとっては難民生活を続けることもつらかったはずだが、帰国してもそこはまだ安定したとは言い難い祖国である。

今日会った学者が言っていた。「ブッシュとイスラエルの中東全域に対する陰謀は失敗した」と。仮にそうだとしても、その後の中東世界が目指す先は見えない。

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