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米国とイラクの地位協定

現在、イラクに駐留する多国籍軍は、安保理決議に則るイラクの要請に基づき法的に駐留しているが、この決議が年末に期限を迎えるにあたり、イラク政府は決議のさらなる更新を求めず、駐留を継続する多国籍軍と二国間合意を締結するために、交渉を継続している。この交渉を先導しているのが、米国であり、米国とイラクの地位協定(SOFA)の素案が出来上がったと報道されている。

現時点での報道によれば、この素案は、2009年中期までに米軍が基地外で攻撃作戦を展開することを終了し、2011年末までにイラクから撤退することを定めている他、イラク側が米軍の作戦行動に対する基本的な許可権を持つことを規定している。

本合意については、イランからの圧力のためか、あるいはマーリキー首相が米軍無きあとの政権維持に対する不安にかられたからか、途中からイラク側が頑なになり、結果、当初よりもイラク側の要望が認められた。イラクの制空権はイラク側に渡され、攻撃部隊のみならず、ほとんどの部隊の撤退期限が定められ、米軍兵に対する訴免・不逮捕特権が大幅に縮小された。

しかしながら、SOFAがこのまま合意として最終的な形になる見通しは明るくないようだ。米側は、この合意を議会が承認する必要はないが、イラク側は、国家安全保障委員会、閣議および議会で承認されなければなら胃ようである。イラクの特に議会においては、すでに不満が表明され、国内では複数回反対デモも発生している。

反対者には、そもそもこのような合意を締結すること自体に反対する者がいる。その中には、イランとの関係に気兼ねする者も多いようだ。国連安保理決議の下でイラクに駐留する米軍がイランを攻撃するのは国際法上、あまりにも問題が多いが、二国間合意の下に駐留する米軍の場合、ハードルはより低くなる。また、米軍に対する裁判の管轄権や訴免特権が、イラクの主権をないがしろにしているとの立場の反対者もいる。特に、来年1月までに地方評議会選挙が予定される中、国家の利益という立場よりも有権者の反応を気にして、反米を標榜する議員が少なくないことも事実である。

このように、7月末までに合意されていたはずのSOFAは、難産の末、素案にまで辿り着いたが、これが最終的なものになるまでの道のりは容易ではなさそうである。

なお、正式なSOFA素案は公表されていないが、8月にクウェートのカバス紙に報じられた素案をベースに、報道等で断片的に取り上げられた部分を加えたのが、以下である。スペースの関係から、争点となった部分以外は(略)になっており、恐縮ながら、ご参考まで。なお、日米地位協定と章立て等を比較すると、きわめて似通っており、興味深いかもしれない。

    イラク・米地位協定素案

第一条 目的 本合意は、米軍の暫定的な展開と活動およびイラクからの撤退を規定する規則と基礎的な必要性を特定する。

第二条 言葉の定義 (略)

第三条 法的規則 米軍および文民の全構成員は、本合意に基づき軍事作戦を実施する際には、イラクの処方、慣習、伝統および合意を尊重しなければならない。全構成員はまた、本合意に定められていないいかなる活動も控え、米側は、これを遵守させる責任を負う。

第四条 責任 (1)イラク政府は、イラクの治安と安定維持努力に対する米軍の暫定的な支援を要請する。

(2)本合意に基づき実施される軍事作戦は、共同移動作戦司令部(JMOCC)が監督し、本共同司令部が解決し得ない問題は、合同閣僚会議に提出される。

(3)作戦はイラクの憲法、処方、周研および国家的利益を尊重しなければならない。

(4)双方は、イラクの治安能力向上に向け継続的に協調する。

(5)本合意は、いずれの側の自衛権をも制限しない。

第五条 所有権 (略)

第六条 合意された施設および地域の使用 (略)

第七条 軍事用品の貯蔵 (略)

第八条 環境保護 (略)

第九条 移動 (略)

(3)空域管制圏は、本合意実施後直ちにイラク側に引き渡される。

(4)イラクは米軍に対し、イラク空域の管制圏を暫定的にゆだねることができるが、イラク政府の要請により、引き渡しが行われる。

第十条 契約 (略)

第十一条 サービスおよび通信 (略)

第十二条 司法権 (1)米軍は合意された施設および地域における米軍および文民構成員に対する排他的な司法権限を有する。

(2)上記(1)以外の地域において非作戦活動時以外に犯されたイラクの諸法に対する重要な犯罪及び意図的な犯罪に関しては、イラク側が裁判権を有する。

(3)イラクは、米国のコントラクターに対する司法権を保有する。

  (中略)

(6)イラク当局により逮捕された米軍構成員は、24時間以内に米軍当局に引き渡される。

第十四条 出入国 (略)

第十五条 輸出入 (略)

第十六条 課税 (略)

第十七条 ライセンスおよび許可証 (略)

第十八条 公用・軍用車両 (略)

第十九条 支援サービス (略)

第二十条 通貨および為替 (略)

第二十一条 賠償 (略)

第二十二条 拘束 (1)いかなる拘束も、国際法に基づきイラク政府により定められたイラクの法律、憲法、主権および国家の利益に基づき実施されなければならない。

(2)米軍により拘束された人物は24時間以内にイラク当局に引き渡される。

(3)イラクの法律に従いイラク当局が発行した許可なしには、いかなる拘束作戦も実施されない。

  (中略)

(5)拘束者はイラク当局により用意され、監督・コントロールされる場所に拘置される。

第二十三条 他国との合意 (1)イラクは多国籍軍を構成するいかなる他の国に対してもイラクの治安と安定実現のための支援を要請することができる。

(2)イラクは、イラクの安全と安定実現支援を求めるために、本合意中で言及されるものを含む合意を締結することができる。

第二十四条 実施 (略)

第二十五条 実施合意 (略)

第二十六条 目標となる期限 2009年6月末までに米軍はイラクの諸都市における作戦活動を終了し、2011年末までに撤退する。この期限については、イラク側の要請により変更することができる。

第二十七条 有効期限 本合意は○年間有効とし、更新可能である。

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