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オルメルト・イスラエル首相辞任がイラクおよび湾岸情勢に与える影響

 オルメルト・イスラエル首相が汚職により、9月の選挙に立候補しないことを表明した。これは、歴代首相の中でも最も支持率が低下したことの当然の結果とも言える。今後は、イスラエルの内政および中東和平への影響が注視されるが、イラクおよび湾岸に対しては、以下のような影響が考えられよう。

1.辞任そのものに関する影響
 イラクは自国内政に手いっぱいで、政府と国民双方共に、イスラエルおよび中東和平に対し、大きな関心を抱いていない。湾岸諸国は、イスラエルと一定の関係を構築してきたが、現時点では、首相が湾岸に人脈を築いているとは言えない。逆に、2006年にオルメルトがイスラエルの核保有について発言した際には、カタル等が対イスラエル制裁を公言した。このため、実質が伴うかはともかく、表面上の拒否反応に鑑みれば、今回の辞任は、「それ見たことか」という反応を招くことが予測される。

2.中東和平および対イラン武力行使
 オルメルトの政権末期には、中東和平前線国に対しては、和平の進展を政治的得点にするためか、融和姿勢が強かったように思われる。この和平への流れは、湾岸諸国およびイラクにとっては、各論に異論があろうと、総論は賛成であろう。また、ブッシュ米政権末期のイスラエルによる限定的な対イラン武力行使(サージカル・ストライク)が噂されて久しいが、政権末期の窮状を救うための武力行使は、オルメルト辞任により、まずは遠のいたように思われる。
 より懸念されるのは、後任首相の政策であろう。後任には、リブニ外相、モファズ国防相等が取り上げられているが、イラン出身で強硬派のモファズが首相になる場合には、湾岸のみならず多くのアラブ諸国の懸念を惹起する可能性が高い。
 かりにモファズ国防相が首相に就任し、対イラン武力行使の可能性が高まったり、レバノンのヒズボッラーに対する強硬姿勢が見られる場合には、イランが域内に張り巡らせている影響力を行使して、域内の不安定化および警告に乗り出す可能性があり、たとえばイラク情勢の緊張があり得るかもしれない。また、イスラエルの動きに呼応し、バンダル・アッバース等のイラン海軍や革命ガードが騒がしくなる場合には、湾岸諸国をはじめとする中東各国に不安が拡大する可能性が高い。

3.米政権との関連
 ブッシュ大統領は、「偉大な大統領」として引退するためにも、中東和平の進展を積極的に進めてきたが、イスラエルが強硬な首相を抱く場合には、和平が後退する可能性もあり、そうなると、間接的に米政権に対する嫌悪感がイラクや湾岸諸国で強まる可能性も考えられる。

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