« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »

北朝鮮核問題と中東

26日、ブッシュ米大統領は、北朝鮮によるプラトニウム抽出に関する核開発計画の申告書提出を受けて、テロ指定国解除の指示を行ったそうである。中東における核開発を含む大量破壊兵器破棄問題事件と対比すると、今回の米国の措置はあまりに大きく異なる政治的な措置と呼べそうである。 ブッシュ大統領は、対テロ戦争と大量破壊兵器の拡散防止を掲げて来た。

これに対し、リビアは無条件で大量破壊兵器を破棄し、制裁を解除された。イラクは、数回にわたり大量破壊兵器開発計画の申告書を国連に提出し、国連査察団の査察を長年にわたり受け入れてきたが、結局、開発の意図を疑われ、政権をつぶされ、その後継続することになった混乱に投げ込まれたのであった。イラクが提出した申告書は、核に限られないものの、最終的な最終且つ完全な報告書(FFCD)は1万頁を超えた。また、イランは、民生用以外での核開発を疑われているが、核兵器保有が公然の秘密となっている「敵国」イスラエルが加盟していない核不拡散条約(NPT)を支持し、核兵器非保有国としての法的権利を主張しているが、いまや、段階的制裁をかけられると共に、米もしくはイスラエルによる武力行使の対象になるのではと懸念されている。

このようにみると、NPTを脱退しながら、ウラン濃縮や保有する核兵器については先送りしたままで、60頁あまりの申告書を提出しただけで、テロ指定を解除される北朝鮮の場合とは、雲泥の差があることは明白であろう。外交でほとんど得点をあげられなかったブッシュ政権が、退任する前に、なんとか成果をあげようとする政治的意図が見え隠れしてならないのである。

また、45日の検証期間を経て、実際の解除は行われる由だが、これについても疑問が残る。第一にそれは、検証の有効性である。NPTに加盟していないために、おそらく検証機関としての実績を有するIAEAは関与しないことになろう。IAEAは、イラクにおける査察の際には、10年以上の査察の実績の上で、追加的な申告についての査察について、60日間を要した経緯がある。しかもイラクの場合には、検証が容易とされるウラン濃縮の査察であり、プルトニウムの場合とはおのずと異なるのであろう。第二に、第二段階とされる今回の申告には、シリアとの核開発協力が含まれていないが、時期的に巧妙な意図があるように思われてならない。26日まで、シリアは、イスラエルにより空爆された違法な核開発施設建設現場とされる施設にIAEAの査察団を受け入れた。この結果はまだ明らかになっていないが、建設現場で核関連の作業が実施されない中では、おそらく核開発の証拠が明らかになる可能性は高くないように思われる。といことはつまり、北朝鮮の申告によって、「チームを組んでいた」シリアの核開発が明らかにされ、あるいはもう一つの「チームのメンバー」であるイランの関与が濃厚になり、対イラン武力行使に北朝鮮が道を開いたというシナリオは免れることができたのである。そこでは、45日の検証期間を経て、米国を含む国際社会からのシリアに対する「報償」が出そろってから、「チーム」を売ることをできる余裕が与えられたと見るべきであろう。 いずれにせよ、もしも核開発問題が進展を見せるのであれば、ブッシュ政権がこれを外交的成果として大々的に「売らない」ことは考えにくい。

日本は北朝鮮からの脅威をより直接的に受ける可能性が高い国であるが、完全な核の放棄も拉致問題の満足のいく解決もないままに、この状況を見ることになるのであろう。また、北朝鮮の申告により、「売られることになる」かもしれないイランとシリアについては、武力行使を含め、より圧力が高まる可能性が否定できないであろうが、かれらもまた、「被害者」と言えるのであろうか。米国の外交政策の柱である大量破壊兵器の拡散防止が信頼性を欠くのであれば、将来に様々な禍根が残る気がしてならないのは、私だけであろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »