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ブッシュ演説:米軍削減一時停止

先般アップしたペトレイアス報告を受けて、10日にブッシュ米大統領は国民向けの演説を行いました。少し遅くなりましたが、このブッシュ発言のポイントは以下のとおりです。

増派の目的であった宗派対立の鎮静、治安の改善及びテロリストの追放のすべての分野で重要な進展が見られた。治安の改善は、政治・経済分野での進展のための道を拓き、イラク政府は予算とベンチマークが取り上げた三つの法案を通し、経済指標も改善した。カーイダからイランに至るまで、さらなる政治的進展をもたらすために必要な妥協を困難にしている脅威は継続しているが、増派は大きな成功への期待を新しくしている。

7月末までに増派した5個旅団を撤退させるが、それ以上の削減については、撤退後の評価をしてから検討するとの現地司令官に時間を与えることにした。

イラク人自身が挑戦に立ち向かう必要があるが、我々は、イラクが治安と将来に責任を持てるよう、経過的期間における支援を行っていく。イラク軍の能力向上は、テロリストや過激勢力の掃討に米軍が傾注することを可能にするため、イラク部隊の訓練に努める。

米国の復興および治安分野での拠出を減少させ、イラク自身が責任を負う方向にある。政治分野では、地方勢力の参加や政治的妥協も進展し、来るべき選挙は、平和的手段を通じた政治的目的実現に貢献するであろう。外交分野での関与の増加も必要なため、米政府として、サウディ、ヨルダン、UAE、カタルおよびエジプトに対し、大使館再開を働きかけると共に、イラク国際協約の開催を支援するよう、各国に働きかける。

イラン政府は、隣国との共栄か、不法な民兵を支援しイラク国民を脅かすことにより、彼らをイランへの敵対へと駆り立てるかを選択する必要がある。イランが正しい選択をすれば、米国は二国間の平和的関係を支援しようが、イランが誤った選択をすれば、米国は我々の利益とイラクを守るために行動するであろう。

軍をはじめ、我々の忍耐が求められるが、8月より、中央軍管区所管地域へのすべての軍人の派遣期間を15カ月から12カ月に短縮すると共に、帰国後1年は本国で過ごせ得るようにすることを求めた。

議会は、派遣部隊が必要とする追加的資源(1080億ドル)を認め、彼らの手を縛らないようにすべきである。この法案がすべての要求にこたえない場合、拒否権を行使しよう。トルーマンおよびアイゼンハワー政権下の軍事予算は国民総生産の13%、レーガン政権下でも6%を維持していたが、米国本土を攻撃しようとする的に直面しているにもかかわらず、現在の国防費率は4%強にすぎない。

イラクは、カーイダとイランという今世紀米国が直面する最大の脅威が集まる場所である。我々が失敗すれば、カーイダは米国攻撃のための拠点を得ると共に、イランがその空白を埋めるであろう。アラブ主流派はカーイダを拒否し、シーア派主流派がイランの教条主義を拒否している中、米国は彼らと協力し、米国民の安全という目的に近づくべきである。

状況が改善し、その日が来るのであれば、部隊は帰国することになろう。

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ペトレイアス報告:2008年4月

8日並びに9日、ペトレイアス駐イラク米軍司令官は昨年9月に引き続き、イラク情勢に関する議会報告を行った。米国でもいわゆる「ねじれ国会」の状態が継続する中、現地の司令官報告を前面に押し出し、それを追認することで議会や国民を納得させるというブッシュ政権の手法は、現在のところ成功しているようだ。イラク情勢に関してはブッシュ大統領よりもペトレイアス司令官の方が信頼できるとの世論調査の結果もあり、ブッシュ大統領は今回も、ペトレイアス司令官報告を基礎に、報告の翌日、増派された米軍部隊撤収の停止を宣言したのであった。今回の報告の要約は以下の通り。

イラクにおける治安状況の現状を提供し、提言をさせていただく機会に感謝する。

前回の報告以来、イラクにおいては重要ながら、平坦ではない進展がみられた。昨年の九月以降、暴力のレベルと民間人の死者数は大きく減少した。イラクのアル=カーイダや他の過激派は大きなダメージを受け、イラク治安部隊の能力は向上した。一部地域の状況はいまだに不満足で、数えきれない挑戦が残されている。それ以上に、過去二週間の出来事は、繰り返し警告してきたごとく、昨春以来の進展は脆く、ひっくり返される可能性があることを想起させた。それでも前回の報告時よりもイラクの状況は改善しており、また、イラクが内戦のはざまにあり米軍の増派が決定された時よりもはるかに良い状況にある。

この進展に貢献した要素は複数ある。第一に、多国籍軍とイラク軍の増加のインパクトがある。米軍増派に加え、目立たないがイラクも増員を行い、2007年時点よりも10万人以上の治安部隊を加え、徐々にこれらの部隊を展開する能力を向上させている。

二つ目の要素は、イラク国民を擁護し、イラクのアル=カーイダを追撃し、犯罪者や民兵と戦い、地域での融和を進め、政治・経済分野での進展を可能にさせるために、反乱鎮圧に向け多国籍軍とイラク部隊が国家大で展開したことにある。

いま一つ重要な要素は、イラク国民の一部で起こった態度の変化である。2006年末のスンニー派の「覚醒評議会」出現以来、イラクのスンニー派たちはイラクのアル=カーイダによる無差別暴力と過激な教条主義をますます拒絶するようになっていった。これらの人々はまた、政治分野への参加なしに褒章にありつけることはないことを理解した。覚醒評議会は、数万規模のイラク人、かつての反乱部隊が「イラクの子供たち」として現地の治安に貢献できるようにしてきた。彼らの貢献とあくなき追撃により、イラクのアル=カーイダの脅威はいまだに深刻ではあるが、それでも大きく後退した。

 もう一つの重要な要素は、最近のバスラ並びにバグダードにおける衝突が示したように、昨秋のムクタダー・アッ=サドルによる停戦である。最近、一部の民兵が再び活動を始めた。サドルの停戦はある程度状況を改善させたが、最近の衝突はまた、特別グループと呼ばれる部隊に対して資金援助、訓練、武器支援、指示を与えてきたイランの破壊的な役割に焦点をあて、イラクの多くの指導者に対して対イラン懸念を増大させた。特別グループは民主イラクに対する長期的に最大の脅威である。

 将来的には、イラクの仲間と共に我々は、残された多くの障害に対処し、進展を享受することを目的とする。私は、増派部隊の撤収を継続する一方でこの目的を達成できると信じている。

 前回の報告時に、イラクの基本的な衝突は宗派・民族対立にあると述べた。この対立は継続しており、外国勢力の強い影響を受けつつ、イラクの長期的安定のカギであり続けている。さまざまな要素が宗派・民族対立を暴力的にしている。

 アル=カーイダ幹部は現在でもイラクを彼らの世界戦略の中心に位置づけ、様々な支援を実施している。隣国の介入はイラクの障害を面倒にしている。シリアは、同国領内からの外国人戦士流入削減のための一定の措置をとったが、イラクのアル=カーイダを支持する重要なネットワークを一網打尽にするために十分ではない。イランは、特別グループに対する支援を通じて暴力を煽っている。

 イラク政府の不十分な能力が、宗派間の不信感をあおり、不正が問題を深刻にしている。これらの障害や最近の衝突にもかかわらず、さまざまな宗派・民族対立が、暴力を通じてではなく議論を通じて行われるようになっている。実際、バグダードおよび南部における最近の暴力の激化では、少なくとも現時点では、多くの勢力が理性的に物事を進め、紫外線よりも政治的対話を選択している。

 イラクは不安定ながらも、治安分野で進展を見せた。過去6ヶ月間の治安事件数は、最近のバスラとバグダードでの暴力事件による増加を除き、2005年中盤以来見られないレベルにまで減少した。将来については不確定ながら、この暴力事件以降、再び治安事件数は低下し始めている。過去1年のイラク民間人死者数は、20062月のサーマッラーのモスク爆破以来最低である。

 宗派・民族対立は大きな懸念であり、介入しなければ継続的に転位する癌のようなものである。前回の報告時以降、宗派・民族対立による死者数は減少している。この数字の背景には、バグダードにおける宗派・民族対立の減少がある。その一方で、多国籍軍とイラク部隊は、地域社会においてスンニー派とシーア派の指導者たちが傷を癒すための長いプロセスを開始できるよう、暴力の低下に焦点を当ててきた。

 イラクのアル=カーイダの攻撃は、1年前よりもはるかに減少している。治安の改善と敵のネットワークに焦点を当てた結果、彼らの攻撃は効果のないものになっている。宗派・民族対立による死者数が比較的低レベルで推移する中、敵は宗派・民族対立に再度火をつけることができなくなっている。地域社会の安全に貢献するイラク人ボランティアの登場は、重要な出来事であった。91千名以上のシーア派並びにスンニー派の「子供たち」が彼らの地域を擁護し、インフラや道路を守るべく多国籍軍とイラク軍を支援するための契約を結んでいる。これらのボランティアは、暴力の低下によって失われてはならず、彼らとの契約にかかるコストと値段の付けようがない命を比べることなどできない。

 「イラクの子供たち」はまた、仕掛け爆弾や武器庫の発見に貢献している。2008年に発見した武器は、すでに2006年全体で発見した量を上回っている。「イラクの子供たち」の重要性を踏まえ、我々はイラク政府との間で、彼らを治安部隊に組み込むか他の雇用機会を与えることについて努力しており、すでに21千人以上が警察、軍および他の政府の職を与えられている。このプロセスは遅々としたものではあるが継続しており、我々はこれをフォローしていく。

カーイダも「イラクの子供たち」の重要性を認識しており、イラクのアル=カーイダは彼らを継続的に攻撃の標的にしている。しかしこのことは、女性、子供及び障害者を自爆テロ犯として使う手法に加え、イラクのアル=カーイダをさらに孤立させている。さまざまな地域でのイラクのアル=カーイダに対する支援の減少と共に、彼らに対する追撃は、彼らの能力、規模及び行動の自由を大きく失わせている。我々は、イラクのアル=カーイダを支援する「聖域」を大きく縮小させたが、まだ行うべきことがある。イラクのアル=カーイダは凄惨な攻撃を行う能力を有しており、彼らの攻撃を継続させる資源を維持する外部からのネットワークにも圧力をかけなければならない。

 イラクのアル=カーイダを打ち破ることは、米軍の精鋭対テロ部隊による作戦にとどまらず、多国籍軍やイラク軍の通常部隊による作戦、情報収集努力、政治的融和、経済・社会プログラム、情報操作、外交努力、拘束者に対する反テロ工作等を要請する。このことに関連し、イラク及びその他の地域における我々の作戦の成功のカギとなる情報・監視・偵察活動に対する議会の支援を高く評価する。イラクのアル=カーイダとの戦いは、イラクの不安定の主要な源を減らすばかりでなく、地域の不安定を進め彼らの影響力を拡大するための道具に(イラクを)使用するというカーイダの幹部の目論見をも後退させる。オサーマ・ビン・ラーデン並びにアイマーン・アル=ザワーヒリーは継続的にイラクの状況を悪用しており、またイラクのアル=カーイダは中東のより大きな範囲で不安定化工作を行っている。

 イラクの治安部隊と共に、我々はまた、特別グループに焦点を当てている。これらの組織は、イランのクドゥス部隊により指揮され、資金提供と武器供与を受け、訓練され、レバノンのヒズボッラーの助けを得ている。このグループこそが、イラン製のロケット弾や迫撃砲を2週間前にイラク政府の建物に撃ち込み、無辜の命を奪い、首都に恐怖をまき散らし、イラク軍及び多国籍軍による反撃を余儀なくさせた者たちである。イラク及び多国籍軍の指導者たちは、いく度にもわたり、アフマディネジャード大統領および他のイランの指導者たちが約束を守り、特別グループに対する支援を停止することを求めてきた。しかしながら、クドゥス部隊の非常な活動は継続し、イラクの指導者たちは、彼らがイラクに脅威を及ぼしていることを理解している。今後数週間もしくは数か月間のイランの活動を注視し、彼らが隣国とどのような関係をもつことを欲し、イラクにおけるイランの役割がどのようなものになるかを示す様子を注視すべきである。

イラクの治安部隊は、昨年9月以来改善を続けており、彼らの能力と現地の状況に鑑み、治安権限の移譲を進めてきた。現在、イラクの18県の半分が彼らの権限下にある。これらはクルド自治区のみならず南部諸県にも拡大しているが、バスラ県を含む他の県にはまだ克服すべき問題が存在する。しかし権限委譲プロセスは進展することになるはずで、数ヶ月後にはアンバール県並びにカーディシーヤ県で実施されよう。

 イラク治安部隊の改善は継続しており、54万人規模になっている。多国籍軍の一定の支援が必要にもかかわらず、治安作戦を主導する能力を有する大隊は100個を超え、イラク部隊の被害者が米軍の被害者の3倍を数えるようになっていることが示す通り、彼らはより大きな責任を担うようになっている。我々はイラク側と作戦後の評価を行っており、時にイラク側がそれを欲し、あるいは結果として我々の評価が低くなることもある。しかしながら、多くの部隊の行動は確固たるものであり、彼らが自信を得る場合には、イラク部隊はその能力を証明する。

過去1年のイラク治安部隊の改善は特筆すべきものである。能力を高めているイラクが運営する訓練基地は、イラク治安部隊と警察を過去16ヶ月間で133千人増員させた。2008年末までに、拡充する訓練は、新たに5万人の兵士、16個の軍及び特別作戦大隊、23千名の警察官及び8個国家警察大隊を増加させることであろう。治安関連官庁は予算を増加させており、2006年に引き続き2007年においても、米国が提供しているイラク治安部隊基金以上の額を拠出している。本年、イラクは80億ドル以上を、来年は110億ドル以上を供出することが見込まれており、これは、イラク治安部隊基金に要請される額を低減させ、2009年度には51億ドルから28億ドルへと削減されることになろう。

 治安部隊がイラクを防衛し、イラク全土を彼ら自身で安定させることは未だだが、バスラ県における最近の作戦は、短い準備期間で多くの人数の部隊、補給および代替を展開させるイラク治安部隊の能力の向上を証明した。1年前には、1個師団分の軍や警察を展開させることなど不可能であった。その一方で、最近の作戦は、補給、部隊の能力、参謀能力および指揮命令に関し、やるべきことが多いことをも示した。

 我々はまた、米外国軍売却プログラムを通じ、イラクを支援している。20083月時点で、イラク政府はこのプログラム下で20億ドル以上の米製兵器とサービスを購入した。昨年9月以来、この計画は緊急の軍事用品需要にこたえるために努力した。本件と関連して、議会に対し、国際軍事教育・訓練プログラムのための基金復活検討をお願いしたい。この基金は、イラク軍および文民幹部の教育を支援し、将来においてイラクが必要とする指導者の能力向上に重要になろう。

 多くの分野でイラクの治安が改善し、治安部隊がより大きな責任を担う一方で、イラク情勢は複雑でより大きな挑戦を受けている。イラクのアル=カーイダやムクタダー・ッ=サドルの停戦命令に従わないシーア派グループの復活に直面し得る。イランのような外部的要因がイラクの暴力をあおり、他の隣国による活動が治安を悪化させる可能性もある。逆説的に言えば、他の困難は、政治・経済面での進展の機会を提供した治安の改善ゆえにもたらされるかもしれない。改善はまた、さらなる進展が継続するとの期待をももたらす。今後数カ月にわたり、イラクの指導者たちは政府の能力を向上させ、予算を執行し、法案を通し、地方選挙、国勢調査を実施して争点となる地域の地位を確定し、国内避難民や難民を戻さなければならないであろう。このような責務は、戦争の経験を経た発展中の政府にとっての挑戦である。司令官の緊急対応プログラム、国務省の緊急対応基金及びUSAIDのスキームは、イラクがこのような挑戦に対処するための助けとなるであろう。このためにも、補正予算で要求された司令官の緊急対応プログラムへの増額を6月までにお願いしたい。これらの資金は絶大な影響を有する。

 勇気づけられることに、イラク政府は最近、イラクの司令官緊急対応プログラムとして、3億ドルの予算を我々のために分配した。イラク政府はまた、「イラクの子供たち」契約の段階的引き受け用に163100万ドル、小規模産業用ローンに15千万ドル、合同訓練・教育・再統合計画のために196百万ドルを割り当てることに合意した。イラク政府は、2か月前に成立した予算執行時に、より多くの拠出を行うことを約束した。その一方で、イラク側の予算割り当てが我々のそれを上回るとしても、我々自身の資源を確保し続けることは極めて重要である。

先月、指導部に対し、イラクに関する提言を行った。私は、15戦闘旅団規模の増派前のレベルにまで部隊人員を削減する一方で、治安上の進展を維持させることを目的として提示した。私は、治安上の進展を過大評価することなく、イラク側のパートナーと共に国民の安全を保証し、イラク側に状況が許す限り速やかに治安権限を移譲することの重要性を強調した。

9月の私の提言は、作戦・戦略上の考察により行われた。作戦上の検討は、以下の認識を含んでいた。

  軍事的な増派は進展をもたらしたが、この進展は元に戻り得る。

  イラク治安部隊はその能力を向上させたが、さらなる向上が必要である。

  秋の地方選挙、難民帰還、拘束者解放および県境と憲法140条は困難な問題である。

  「イラクの子供たち」の治安部隊への統合等は時間と監視を要する。

  あまりに多くの部隊を拙速に撤退させることは、過去の進展を危険にさらす。

  イラクで必要な任務を果たすには、適切な通常部隊と特殊部隊および顧問団が必要。

 戦略的な検討は以下を含んでいた。

  陸軍をはじめとする米軍への負担は大きい。

  イラク国内の治安問題は、深刻な域内及び域外の脅威と関連している。

  イラクが破たん国家となる場合には、カーイダとの戦い、地域の安定、すでに深刻なイラクの人道的危機及びイランの影響力封じ込めに深刻な影響をもたらす。

これらの要素を検討した末、指導部に対し増派部隊の削減継続を提案し、7月の増派部隊の撤収後、45日間の統合と評価を提言した。この検討期間の後、さらなる削減の提言をいつ行い得るかを決定するために、現地の状況を評価するプロセスを開始する予定である。このプロセスは状況が許す限りにおいての削減とともに、継続される。この手法は、撤退の期限を定めるものではないが、我々の部隊が大変な努力と犠牲の結果に享受された未だ不安定な治安上の進展を確保するために、現地の状況に応じ柔軟さを提供するものである。このような主張と共に、2007年及び2008年初頭の治安上の進展は、イラクの段階的安定のための基礎を構築するものである。このことは、2700万イラク市民にとってのみならず、湾岸地域、米国民及び国際社会全体にとって極めて重要である。明確なことに、アラブの中心地においてカーイダの復活を防ぎ、イランの影響力の進展からイラクを守り、主権を擁護し、イラクの国境外にまで及ぶ民族・宗派対立の再興を予防し、既に深刻な難民問題の悪化を防ぎ、イラクが地域および国際経済における役割を拡大できるようにすることは、我々にとっての利益である。

終わりに、イラクにおける我々の国民の奉仕について申し述べたい。我々は彼ら、彼らの家族に多大なる犠牲を強いた。彼ら及び軍全体に強いた負担は、私の提言の重要な要素を構成している。議会、行政府及び国民は、我が軍と彼らが愛する人々に計り知れない支援を行ってくれた。我々はそのことに対し、深謝する。国家が国民とその家族に感謝することよりもありがたいことはない。全ての米国民は、イラクに奉仕するすべての男女とその勇気、決断力、エネルギー及び彼らが毎日示している率先さを誇りに思うべきである。

原文:http://www.defenselink.mil/pdf/General_Petraeus_Testimony_to_Congress.pdf

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マーリキー首相の賭け -サドル勢力掃討作戦の背景

 2006年以降のイラクにおいては、宗派を基礎とした民兵による対立が、最も深刻な被害をもたらしてきた。宗派対立とは言え、その実は権限・利権争いであり、その意味では、宗派内にも多くの対立が存在する。特に、シーア派内のサドル勢力とイラク・イスラーム最高評議会(SICI)との間には、根深い確執とライバル関係が存在し、以前にもカルバラーのモスク管理権限をめぐり大規模な対立が発生した。

 昨年8月29日のサドル勢力の一方的停戦により、イラクの治安状況は劇的に改善した。サドル勢力は、米軍およびライバル勢力との対立・交戦を通じて疲弊した組織の立て直しを図ると共に、強力な米軍の掃討作戦を避けて組織中核の保全を図った。この治安の一定の改善を受け、マーリキー政権としては、対立を解消するために国民融和を進め、政府の信頼を増し、あるいは不満を解消し対立を縮小させるために復興を進める必要があったと言えよう。しかしながらマーリキー首相はこのような選択をしなかった。あるいは、もはや国民の信頼が薄く、1年以上も政界再編を模索しながらそれすら達成できない「死に体」政権としては、政治的な環境整備に望みを抱くことはできなかったのかもしれない。政治的進展をもたらす代わりにマーリキー政権は、過激な勢力の切り捨てを伴う組織の建て直しに入ったサドル勢力の「弱体化」を前に、力による封じ込めという「賭け」に出たと考えられる。あるいは、その背景には、サドル勢力のライバルであるSICIの圧力があったのかもしれない。来年以降の米軍の駐留状況の見通しが立たない中で、米軍を避けて停戦し弱体化したかに見えたサドル勢力を、米軍がいる間に掃討することが必須と考えたのかもしれない。あるいはもしかすると、マリーキー政権の掃討作戦を事前に知らされていなかったとする米国の立場にもかかわらず、その直前にイラクを訪問していたチェイニー副大統領との間で、何らかの調整があったのかもしれない。

 このような背景ゆえにマーリキー首相は、「交渉はなく」、「最後まで断固として戦う」としたのではなかったのか。ところがこの不退転の覚悟にもかかわらず、戦闘は政府側の思惑どおりに進まず、武装解除なき停戦という結果に終わったようである。

 戦闘自体の結果だけ見れば、双方にとって決着がつかないままに終わったと言えようが、政治的には、マーリキー政権にとり大きな痛手となったように思われてならない。

 第一に、マーリキー首相にとって賭けであった「断固たる作戦」によるサドル勢力武装解除は成功せず、バスラ市においてはサドル派の戦闘中の拠点が拡大し、また、戦闘も複数の地域に拡大した。バスラの警察部隊の一部は「よろこんで」サドル勢力に投降した。米英軍の空爆や他地域の治安部隊のバスラへの投入も見られたが、サドル勢力の鎮圧は成し遂げられなかった。これは、政府が力でサドル勢力を封じ込めるのは不可能であることを証明した。
 第二に、マーリキー政権に強い影響力を有するSICIは、バグダードおよび南部におけるイラク治安部隊の主力を構成してきた。「イラク政府部隊」とサドル勢力の衝突と言うとき、その実は、SICI対サドル勢力に他ならない。今回の衝突の中でもこのような構図が色濃かったが、イランの仲介に際して、SICIのバドル旅団司令官が出てきたことは、問題の本質を表面にさらすこととなったように思われる。
 第三に、サドル勢力が組織的に動くようになったことが確認された。サドル勢力は一枚岩ではなく、2004年の米軍との停戦の際には、停戦指示が効力を発するまでに約1週間を要した。今回の衝突の前には、組織に亀裂が走り、指示系統も後退したと見られていた。しかし、停戦は比較的短期間で効果的なものになったように見えた。おそらく、攻撃を受けるにあたり、サドル勢力は逆に結束を強めたのではないだろうか。

 マーリキー首相の賭けは失敗した。今後は、力で排除できないはずのサドル勢力を含めた国民融和に進めるために、マーリキー政権が思考を変えていくか、あるいはマーリキー首相の指導力が地に落ちて退陣を余儀なくさせられるのか、が注目される。現在のままの緊張状態が放置されれば、たとえば米軍駐留部隊削減などをきっかけとして、たとえば内戦のようなより悪いシナリオが現実のものになるように思われてならない。

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22歳に見て欲しい映画

今日、「大いなる陰謀」と題する映画を見てきました。普段は、試写会の案内が来ても時間もないので、ほとんど行ったことがありませんでしたが、なぜかふらっと行って来ました。題名が示唆するように、よくある「陰謀」ものかと思い、眠いのに、出席の返事を出してしまったことを後悔しつつ行ったのですが、あにはからんや、面白かった。

物語の筋は、http://movies.foxjapan.com/ooinaru/を参照いただくとして、米上院議員(トム・クルーズ)とジャーナリスト(メリル・ストリープ)の間のやり取り、大学教授(ロバート・レッドフォード)と学生のやり取り、一言一言がとても重く、息をつかせない作りこんだ映画という印象で、重い映画にもかかわらず、時間を感じさせませんでした。

現実の世界においても、米国が言うところの「対テロ戦争」と呼ばれるものが本当にあの通りの大義名分をもって進行しているのか、大きな疑問を抱いている私としては、フィクションでありながらもその背後に「リアリティ=現実の虚偽」を強く感じさせる作品でした。政治、ジャーナリズム、戦争、学業を描きながら、この映画は人間を描いており、あえて結論を出さずに、観ている者に大きな質問を投げかけます。恋人同士でいく映画ではありませんが、たまには根を詰める映画もいいんじゃないかと思わせました。たぶん、この手の映画は大ヒットすることはないのでしょうが、できれば22歳の大学生にぜひとも見て欲しい映画です。

残念だったのは、「大いなる陰謀」という邦題です。おそらくこの映画の主題は「What's for?」であり、「何のため」、「誰のため」を問うているように思われます。「何のための戦争」、「誰のための政治」、「なぜ学ぶのか」、「何のためにしに行くのか」、「ジャーナリズムとは何を目的とするのか」、それを考えさせるものに他なりません。それにもかかわらず、「政治的陰謀もの」を想起させる邦題はあまりに矮小すぎるように思われてなりません。とは言え、原題の「Lions for Lambs」もシニカルながら、軽すぎる印象はぬぐえませんが。

畑違いのわたしが映画の論評をするなど思いもよらないことで、失礼ながら、招いていただいた20世紀FOXさん、いい意味で裏切られました。ありがとうございました。たぶん、もう一度足を運ぶ映画になりそうです。

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