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トルコ軍撤退?

29日、トルコ系クルド組織クルド労働党(PKK)掃討作戦のために、北イラクに越境攻撃を仕掛けていたトルコ軍が撤退を開始したとの報道が流れた。完全撤退であるか否かも含めて、不明な点も多いが、まずはいい傾向といえるのかもしれない。

まだ報道が流されたばかりで不明な点も多いが、過去数日にわたり、外交的なイニシアティヴと北イラク情勢の変化が見られたことが、トルコ軍撤退開始の背景にあるのかもしれない。

トルコは、PKKの拠点を全面的に掃討するまで撤退はなく、イラク側に対しても、PKKのみを標的にしているとして理解を求めてきた。しかし、北イラクのクルド勢力が、トルコのPKKを積極的に支援してきたわけではないまでも、イラクのクルド人の間で、クルド・ナショナリズムが高まり、過激な反応が出てくるようになっていた。イラク政府側は、最近になって、公式にトルコ軍の即時撤退を求め、クルド自治政府議会は、一般人保護のためにトルコ軍に武力で抵抗することを承認した。

このようなイラクにおける反トルコの流れを受けて、米国が政治的仲介に動いた。これまで米国は、イラクの治安に大きな影響力を有する国として、トルコよりPKK制圧の要請を受けたものの、これを無視し、早急な撤退と解決を求めるとして、弱い外交的働きかけをするにとどまっていた。そもそも、米国はPKKをテロ組織と認定してきた上に、トルコを友好国とみなしてきたが、イラクにおいては、クルド勢力が最も友好的な勢力であり、トルコ軍とイラクのクルドのはざまに立つリスクを冒して、強制力を行使することを逡巡してきた。それのみならず、トルコの要請を受けない一方で、もしもトルコが所属するNATOの介入を要請する場合には、リスクを冒しながら当該地域に築き上げた米国の影響力の陰りと勢力バランスの変更を招きかねないことから、これも歓迎できなかった。

しかしながら、北イラクにおいていっそう緊迫感が高まり、友好的な勢力同士が衝突し、米国のプレゼンスに疑問が呈させる可能性が出るにあたり、ゲイツ国防長官をはじめとする外交的なイニシアティヴに乗り出したのではないだろうか。

このような外交的働きかけに対し、当初から武力行使に乗り気でなかったようであったエルドアン首相が乗ったのは理解できる。また、国際的批判と武力衝突のリスクの大きさも理解していたのであろう。

しかしながら、この撤退開始が、完全撤退を意味するかは、流動的なように思われてならない。トルコの内政的複雑さがこの問題に影を落としているからである。以前指摘したとおり、トルコ軍は、世俗主義と領土の統一の守護者である。しかしながら、宗教色が強いエルドアン政権成立に軍は介入できず、フラストレーションをためていた。それゆえ、エルドアン首相としても、軍の不満を外に向け、領土の統一の守護者としての立場を誇示できるPKK掃討には目をつぶったように思われる。またトルコ軍としては、イラクが弱体化しており、またPKK掃討に国民的支持を得られている現在を、PKK掃討の好機と考えているはずである。

このように考えると、外交的イニシアティヴに対し、エルドアン首相が象徴的撤退を超えて、完全撤退にまでもっていけるかは不明である。また軍としても、これまでの成果で満足するのかもわからない。国民の中にある掃討作戦指示の高まりが、より一層の成果をもたらさない限り満足しないことになれば、深刻な事態の継続が予測される、もしかすると、90年代後半に見られたとおり、PKKの活動を監視するための軍事ポストを維持したまま、必要であれば再度越境攻撃を行う体制を維持し、完全撤退はまだ正田気になるような可能性もあるのではないだろうか。

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