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来年の国際情勢を悲観

昨年は、サッダーム・フセインの処刑で幕を閉じた。今年は、ブット・パキスタン元首相の殺害で終わった。

暗いニュースが続く中、今年と来年は、米、英、フランス、ロシア、オーストラリア、韓国と多くの主要国で首脳が交替した。それは、新たな時代の訪れを告げるのであろうか。
新年においては、パキスタン総選挙の実施をめぐる混乱が予想され、さらに2月にはコソボの独立、継続する油価の高騰とドルの立場、さらには東アジアの将来と、国際社会が抱える問題は山積みのように見える。イランやパレスチナ、レバノン、イラク等の中東における継続する問題に加え、これらの深刻な問題は火を噴くことなく抑え込まれるのであろうか。

ブット元首相の殺害をめぐっては、その衝撃の大きさゆえに日本でも大きく報道されている。すでにニッポン放送の朝の番組等で、パキスタン情勢の先行きに対する懸念については、今年の早い内から表明してきた。ブット並びにシャリーフ両元首相に対する批判をばねに元首に君臨してきたムシャッラフ大統領は、対テロ戦争の前線国元首を引き受けてきたが、経済的停滞に対する国民の批判に加えて、憲法を無視し法曹界と対立した。またアフガン戦争での立場とは裏腹に、軍や諜報機関に浸透する北西部部族地域の過激なイスラーム勢力およびパシュトゥーン人の動きを容認し、言わば「毒を飲んで」政権の延命を図った。内政面での失政のつけが、国民による反政府デモや赤のモスクの立てこもり事件を招き、根本的な改革を先送りにしたままでの北西部に対する形ばかりの空爆は、逆に大統領の政権基盤を縮小させた。このような中でのブット元首相殺害事件は、来年1月8日に予定されている総選挙の実施に暗雲を投げかけている。それは単なる民主化の遅れと済ますことはできない重大な問題である。パキスタン内政の行き詰まり感が強い中で、選挙は、さまざまな問題に政治的な解決をもたらすことを意味している。しかし、このままでいくと、ブット元首相が率いていた人民党やシャリーフ前首相の勢力等が選挙をボイコットして選挙の正当性に疑問が付され、あるいは政権による戒厳令の導入と共に選挙が延期されることになり、平和的な政治解決へのシナリオ自体が崩れることになりかねない。最悪のシナリオは、核を保有する破たん国家への道である。
このようにパキスタン問題は極めて重要で、国際社会が看過できない問題と言えようが、必ずしも問題が正確に伝えられていないように思われてならない。ブット元首相の殺害をめぐっても、民主化を推進する切り札としての世俗派の代表がイスラーム過激派の前に非業の死を遂げたといった報道が多く、善悪論争になっているように見える。殺害されたがゆえにヒロインに祭り上げられているのかもしれないが、必ずしも身辺がきれいではないブット元首相に対する国民の見方は、全面的な肯定ではない。三代に亘る政権に失望してきた国民が宗教に助けを求めている社会的な背景を忘れてはならず、善悪できれいに分けられる問題ではない。それゆえ、形ばかりの選挙が実施されればすべてが解決したり、ムシャッラフ大統領が力を得れば、ターリバーンの基盤となってきたパシュトゥーン人の不満が抑え込まれると考えることは誤りであろう。政治的・社会的問題と政府が抱える矛盾およびこれらの問題に決定的な回答をもたらしえない野党といった構造的な問題の認識に欠けると、重要なパキスタン問題の帰趨を見誤ることになりかねないように思われる。

来年は、米大統領選挙イヤーであるが、誰が大統領になり、その後の政策がどうなるかはともかく、もしかすると後年、米国衰退を象徴付ける年と言われる可能性があり得る。それは、米国が描いたシナリオが崩れつつあるパキスタンでのみ見られる現象ではないかもしれない。

ありうべきコソボの独立に際しては、血の匂いの予感がある。内戦や民族浄化が問題となる場合、それはボスニアの場合とは逆に、犠牲者はセルビア人であろうが、コソボの独立を後押ししてきた米国の立場はどうなるのであろうか。また、大統領選挙に入りレイムダック化する米政権は、ヨーロッパでのこの問題に影響力を発揮できず、EUの力が目立つことになるのであろうか。さらには、独立反対の立場をとるロシアは、どのように米国に対峙するのであろうか。

石油価格が高騰し産油国の収入が増加する一方で、ドル決済で得られる石油収入は、ドル安ゆえに産油国に目減り感を与えている。それゆえ産油国の中には、ドルとのペグを見直す動きが出ている。また、石油を売却して得たドルを米国内で運用してきた湾岸産油国は、すでに米国から多くの資産を引き上げている。イランの場合、全体の取引の82%がドル以外の通貨で決済されており、ヴェネズエラ、スーダン等もこれに倣い、あるいは湾岸産油国の中にも見直しを検討する動きがある。そうなれば、実質的な石油本位制に支えられてきたドルの価値は、どうなっていくのであろうか。外貨準備のない米国の通貨は、どこに向かうのであろうか。

また、不透明な北朝鮮情勢に加え、オリンピックが終わった後の中国は、現在の中国のままであろうか。事実上、最大のドル外貨保有国である中国は、この外貨を人質に、米国を揺さぶるのであろうか。

米国の新大統領が誰になるかは日米関係のみならず、世界に大きな影響を及ぼすが、新大統領が直面する外交的課題には大きなものがありそうである。

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BSディベート

今日の朝3時ころまで、NHKのBSディベートを収録していました。

日本のスタジオで米国の専門家の加瀬みきさんと共に、カイロのスタジオに集まったイラク人とニューヨークのスタジオの米国人をつなぐという趣向で、解説するというよりも、イラクと米国の人々の意見を聴取したという意味で、結構面白かったです。

放映前に中身に触れるのはよくないので避けますが、イラク戦争と占領政策の是非をめぐる議論では、徐々に米国人が苛立つ様子と、にこりともせずに怒りを伝えるイラク人の様子が対照的で興味深かったと思います。

正月2日だか3日にBSで放送だそうなので、おとそと共にいかがでしょうか。

以上、公共放送に変わってCMでした。

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北イラク空爆

22日、再びトルコ軍がイラクを空爆したようである。

クルド労働者党(PKK)のゲリラ掃討に関しては、過去の攻撃と異なり、事前の国際的な調整が特徴のようだ。一部で伝えられるところでは、すでにトルコ政府は、シリア、イラン、イラク、米国等との協議を終え、空爆作戦に関する情報協力を実施しているとのことだ。

世俗政治の維持と国家の統一を掲げるトルコ軍は、エルドアン政権に反対してきたが、世論の前にイスラーム色の強い政権樹立に抵抗できずに不満を溜めてきた。しかしながら、国家の統一維持の妨げとなり、テロ活動によって国民一般の反感をかったPKKに対する攻撃は、軍の主張するところであり、エルドアンもこれにあらがうことができないというのが現状であろう。

しかししたたかなのはエルドアンで、軍の動きに受け身であり続けるのではなく、政治主導でイラク北部攻撃の環境を整えているようだ。赤裸々でコントロールの利かない攻撃よりは、イラク政府としても、ある程度政治的抑制の利いた攻撃は受け入れた方が良いとの判断であろう。

イラク政府の主張によれば、これまではPKK以外には、イラクの民間人1名しか犠牲になっていないようであり、今後も冬季は積雪もあり、空爆程度となるであろうが、状況をいつまで各国政府の「協調」の下にとどめておけるかは、懸念されるところである。

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