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ブッシュ大統領の拒否権行使

イラク戦争における大規模な戦闘が終結したとブッシュ大統領が勝利宣言を行ったあの日から、4年たったこの日、ブッシュ大統領は、米軍の一部撤退期限を条件として付した1200億ドル規模の補正予算案に対して拒否権を行使した。

議会は大統領の拒否権を覆す3分の2の票が集まっていないことから、この予算案は葬り去られて終わる見込みだが、大統領と議会の対立は決定的になった同時に、しばらくの間、ブッシュ政権は「国内におけるイラク問題」に首が回らず、動きが取れない状態になったものと理解される。

議会は、予算を「人質」にして撤退を勝ち取る、より正確には、おそらく大統領に拒否権を行使させるための戦術をとったものと考えられる。逆に大統領は、「撤退期限を表明すれば、イラク国民を意気消沈させ、中東全体のテロリストを勢いづける」として、予算が通らなければ軍が十分な活動をできず、部隊交替も満足にできないと述べ、イラクにいる米国民を「人質」にとって、予算を勝ち取ろうとした。来年の大統領選をにらんだ政治的対立の犠牲は、いずれにせよ米軍兵とイラク人のようだ。

2003年5月1日の「終戦宣言」に際してブッシュ大統領は、米軍がテロリストに対する先制攻撃に勝利し、イラクは中東における民主化の先がけになると述べたが、その言葉は裏打ちがなかった。湾岸戦争から政権転覆までの13年間の間にイラク政府の関与が明らかになったテロ事件で外国人が殺害された数はゼロであったが、戦争以降、米軍兵の死者だけで3000名を悠に超え、イラク人に至っては6万人以上が殺害されたと言われている。イラクにおける政治プロセスは混乱を極め、民意とは別に、空虚な政治的争いが対立と不安定に貢献している。2003年5月1日は、終戦ではなく、深刻で新たな対立の日になったと言えよう。

あれから4年、ブッシュ大統領の拒否権発動は、議会の揺さぶりに「終戦」を宣言するのであろうか。それとも、次の大統領が決まるまでの深刻で新たな対立を決定づけることになるのであろうか。その対立の終戦まで、誰が犠牲になるのであろうか。

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