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シリア=米会談

報道によれば12日、米国務省のソアブレイ次官補が、米政府高官として2年ぶりにダマスカスを訪問し、ミクダード外務次官と難民問題等について協議を行った由。本会談はシリア側報道によれば有益な意見交換だったとのことだが、その一方で、シャラア副大統領は、米側との会談は端緒についたばかりであり、関係修復には時間を要すると述べた由である。

この会談は、いくつかの重要性を有しているように思われる。

第一に、イラクをめぐる米国の戦略に変化がみられているようだ。昨年末のベーカー・ハミルトン報告では、イランとシリアはイラクを安定させる能力を有しているので建設的な関与をさせることが必要とされた。しかしブッシュ大統領は本年になって発表した、いわゆるイラク新政策の中で、イランとシリアにイラク問題に関与させないよう圧力をかけるとまったく逆の立場を表明した。このような政権の立場にもかかわらず、数日前にはバグダードの治安関連の国際会議において米国はイランとシリアと同席した。これに引き続き、「端緒」とは言え、シリアと直接協議を行ったことは、米国の政策の変更が早くも始まったことを意味するのかもしれない。

第二に、ベーカー報告は共和・民主両党の議員の主張を取りまとめた結果、対立する意見については細部に至るまでそれぞれの議員の意見を反映したものとはならなかったと聞いている。ベーカー元国務長官は、腹心のジェレジアン元次官補(元シリア大使)の強い主張を受けて、シリアとイランに対する対応は異なるべきと主張したようだ。シリアを圧力と共に懐柔することにより、イランを孤立化させる政策である。イランを孤立させることで、イラク問題に関しイランの無用な関与を避けさせることが一つの目的である。いま一つの目的は、ブッシュ元大統領が湾岸戦争を遂行した際に、アラブ側が割れて、親米のエジプト、モロッコ、湾岸諸国が多国籍軍を構成したことに対する批判が高まった。また、パレスチナ問題を取り上げてアラブ内の亀裂を強めようとサッダームが画策したのに対し、イスラエルとの前線国家のひとつである強硬派のシリアが多国籍軍に参加して、アラブの大勢が決まったことがある。今回も、アラブ内のイラクに対する協力とイラン包囲網構築を決定づける方向の外交工作と考えることができるかもしれない。

第三に、シリア側は対話を望んでいるはずだが、比較的覚めた反応であった裏には、確証はないものの、レバノン問題があると思われる。米国とシリアの対話の障害は、シリアがレバノンを衛星国とみなし、米国はシリアのレバノン介入を対シリア圧力の口実にしていることがある。シリアとしては、他の分野で米国と一定の協調をする用意があっても、レバノンについて米国の黙認を引き出したいのが本音のはずである。

シリアと米国の対話、場合によっては中東情勢に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後継続するか、注意深く見る必要がある。

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