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イラクの治安に関する国際会合の開催

10日、バグダードにおいて治安会議が開催された。この治安会議には、イラクの他、安保理常任理事国、エジプト、シリア、ヨルダン、サウジアラビア、クウェート、イラン、トルコ、国連、イスラーム諸国機構、アラブ連盟から、高い事務レベルの代表が出席した。米国とイラン、シリアが同席するこのような会議は初めてのものであり、注目を集めた。
結論から言えば、来月イスタンブールで予定されている閣僚級会合の準備会合として開催されたこの会議は、とりあえず各国の意見をテーブルの上に出したものにとどまった。

会議および会議をめぐる問題の焦点は以下の通りであった。

○ イラクの安定に向けて域内協力・国際協力が構築可能か
これは会議の主題に他ならないが、報道されている限りでは、現時点では協力体制を具現化するには遠く、各国の立場の表明に終わったようである。ブッシュ大統領が表明した新イラク戦略によれば、イランやシリアを関与させないよう圧力をかけることがポイントであったのだから、ISG報告が提案していたイラクの安定に向けた会議の開催が実現されたこと自体、意義があったのかもしれない。あるいは既にブッシュ政権のイラク戦略のマイナー・チェンジが始まったと見てもよいのかもしれない。ところが、会議の大きな方向は定まっていなかったようだ。米国およびマーリキー首相は、域内勢力による抵抗勢力に対する支援停止を求め、逆にイランやジバリ外相などは、積極的な協力体制を指向していたようである。域内・国際協力の方向づけが明確にならない限り、会議の成功はもとより、後述する米国とイランとの雪解けもないように思われる。

○ 宗派対立の拡大を防止できるか
イラクの最大の問題は宗派対立である。ほとんど報道されていないが、アラブ連盟及び一部のスンニー派域内国は、シーア派伸長への懸念もあり、イラクにおけるスンニー派排除が終わらない限り、問題の解決はないと考え、現行憲法の停止、平等な富の分配およびバアス党排除政策見直しが重要と主張したようである。イラク政府側はこのような要求は内政干渉に他ならないと考えているようだが、域内諸国は、イラクにおけるシーア派の伸長とスンニー派抑圧が、イラク国境を超えた宗派対立へとつながることを強く懸念している。なお、本件が会議において協議されたとの報道はないが、きわめてセンシティヴな問題として扱われているのかもしれない。

○ 敵対するイランと米国の対話があるか
米国はこの会議においてイランおよびシリアと同席することになり、イラン側は否定しているが、ハリルザード駐イラク米大使は、会議の席上、イラン側との直接的なやり取りがあったとしている。イランは中東世界安定のカギを握る国であり、そのもう一方の主体が米国である以上、二国間問題の協議ではないにせよ、両国が同席したことは注目されるべきであろう。これに先立ち、イランの通信社は米国がイランとの直接対話を要求したとの報道を流したが、結局会議の席上以外での「バイ」の協議もなければ、イランの核問題に関して取り上げられることもなかったようである。米国側は、テロリストに対するヒト、モノ、金の支援を停止するよう求め、イラン側は、米国の「占領」が国際的なテロリストの連携を生んでいるとして米軍のイラク撤退の明確な日程を示すよう求めたとされ、主張はすれ違いてある。いずれにせよ、今回の協議は事務レベルであり、ライス米国務長官が出席するとされる次回の閣僚会議における動きの方が重要かもしれない。なお今回の会議に先立ち、イラン・サウジ首脳会議が開催されたが、イランの根回しが効いてスンニー派諸国が米国に同調してイラン批判を繰り広げるような展開にはならなかったのは、イランの外交的勝利であったと言えよう。
またシリアに関しては、マーリキー首相及びスンニー派勢力、旧バアス党勢力のすべてにアクセスがあり、一部で宗派対立の仲介役になるのではないかとの見方もあったが、その動向については現時点では不明である。

○ イラク国内の動き
アラーウィ元首相のイラク・リストを中心として、米国も絡みながらクルド政党やほかの諸政党を取り込んで、新たな与党を作ろうとする動きが水面下で動いているようだ。与党統一イラク同盟(UIA)から、ファディーラ党が離脱したのも気になっており、宗派よりもイラクを優先させるような政策を指向する連合が模索されている。逆にマーリキー首相は数週間の内の内閣改造を表明しており、政局が動き始めている。アラーウィの動きに同調しているとみられるイラク合意戦線は、今回の治安会議が不調に終われば、新たな会派の立ち上げが動き出すとの見方を示しており、米国がマーリキー首相を見限る動き、あるいは米国のマーリキー首相圧力強化が会議と関連して始まっているようにも見える。

今回の協議は象徴的なものにとどまったかもしれないが、来月の閣僚会合に向けて、動きがあるかが注目される。

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