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独裁者の下で:ラマダーン元副大統領死刑確定

サッダーム・フセイン元大統領の腹心、タハ・ヤーシーン・ラマダーン元副大統領が、シーア派住民が多数を占めるドゥジェイルでの無差別逮捕、拷問、処刑の罪で処刑されることが確定した。サッダームと同じ事件で起訴され、いったんは終身刑が下されながら、控訴審で差し戻しとなり、死刑の判決が下るという経緯を経たものであった。おそらく、そう遠くない将来にまた一人、サッダーム時代の幹部が絞首刑に処されることになるのだろう。

タハ・ラマダーン副大統領は、モースルのジャズラーウィ部族の出身で、クルドの血をひいている。彼は、サッダームが権力を掌握する以前にバアス党が依っていた部族ではなく、サッダームが開拓した支持部族に属する正にサッダームの掌中の腹心である。

タハ・ラマダーンもしかしながら、サッダームの独裁に怯えていた。その例は、80年代後半のサッダームが定めた奇妙なおふれに見ることができる。サッダームは、自らをコントロールできない者が部下をコントロールできるわけがないとの理由から、ダイエットのできない人間を組織の幹部にするべきではないと主張し、身長マイナス100以上の体重の人物は局長以上に登用せず、既に局長以上の者は降格させるとした。サッダームは180cmを超える体躯であるから、多少腹はだぶついていても、この規定に引っ掛かる懸念は少ない。しかしこの規定に怯えたのがタハ・ラマダーンである。彼は160cmそこそこの身長で100kgを超える体重であった。このため、彼はダイエットにまい進し、数か月の内に60kg余のスリムな体になったのである。ダイエット後、彼と会ったアラブの首脳の一人は、彼が誰だか分らなかったという笑い話があるほどだ。

サッダームは、思いつきにせよ、ある意味で厳しい規律を部下に強いた。それは、汚職を防ぐ効果を有していたが、強烈な独裁性ゆえに、恐怖をも強いた。

またラマダーン副大統領は、しばしば、治安機関に大きな影響力を有するサッダームの義弟や国軍と天秤に掛けられ、彼らの権力の突出を防ぐための道具に使われた。イラン・イラク戦争中に国軍の影響力が増大すると、ラマダーンは100万とも言われる民兵組織、人民軍を率いさせられ、国軍とバランスを取るようにさせられた。その後、共和国防衛軍特別部隊が力をつけて、サッダームの義息や次男によりコントロールされるようになると、タハ・ラマダーンの役割は終わり、イラン・イラク戦争の終結とほぼ同時に人民軍は解散させられる。

独裁者はしばしばナンバー2を作らないが、彼も形式上はナンバー3(2番目の序列はイッザト・イブラヒーム革命指導評議会副議長)でも、実質は、独裁者の有する権力とははるかに遠い位置にある人物だったと思われてならない。

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