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ローマ法王発言について。。の続き

法王発言に対し、イスラーム世界における波紋が拡大しているようである。

現在私が滞在しているエジプトにおいては、今のところデモが発生したわけでも、教会に対する攻撃が行われたわけでもないが、昨日までの、法王側の対応を待ち、抑制された対応には変化が見られてきた。また、カイロ市内のキリスト教会には警備が増員されたようである。どうやら、「ムスリムを傷つけたのであれば謝るが、私の引用が曲解されている」旨の法王の個人的な謝罪が不満の火に油を注いだようだ。

昨日、マフムード・ザクズーク宗教相は、アフラーム紙にコメントを発表し、法王が明快な謝罪をしなければ、イスラーム教徒の忍耐も長くは続かないと述べた。これと呼応するように、各紙が堰を切ったように各国における抗議活動に多くの紙面を割くようになっている。

イスラーム世界の対応は多様である。インドネシアやインドにおける抗議デモに見られたような、「法王に死を」とのスローガンやパレスチナ西岸におけるキリスト教会攻撃、イラクのアル=カーイダを核とするムジャヒディーン諮問評議会やイランの複数の要人による攻撃的発言がもっとも過激なものであろう。

シリアのデモやカタルの法学者ユーセフ・カルダーウィ師による法王の率直な謝罪要求とムスリムに対する抗議の呼びかけがこれに続く。さらに、法王側の発言に一定の評価を与えるものの、より率直な謝罪とイスラームに対する正当な理解を求めるイラク周辺各国の外交団、マレーシア外務相、エジプトの同胞団の要求等(一部については、昨日のこのブログにて紹介した)がある。

東ローマ帝国皇帝の発言を無責任に引いた上で、これを前提として強制的な布教を断罪した法王が、「引用した皇帝の発言に私の真意はない」と釈明しても、それは確かに、説得力がない。「謝らない」ドイツ人の謝罪を評価しろと言っても無理な話でもある。

しかし危険なのは、ムスリム世界ですでに過激な行動を起こした勢力の方向に多くが引きずられかねない状況である。ヒズボッラーの精神的指導者であったファズルッラー師が体制に引きずられた経緯、98年末の米国による対イラク攻撃を抑制しようとした複数の政府が大衆の怒りに軌道修正した経緯等を見ると、大衆の怒りが頂点に達したとき、アラブ・イスラーム政府に彼らを抑制する力はない。 抑制された反応にも限界が来るかもしれない。

平和を希求する宗教の共存が望まれるとすれば、やはり種をまいたものがこれを刈らなければならないのではないだろうか。

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